「ファンクと言えば、誰を思い浮かべますか?」
この問いかけにまず思い浮かぶのは“ファンクの帝王”ジェームス・ブラウンでしょう。
そして彼から直々に”ファンキー・ドラマー”として最大級の賛辞を受けたファンク界屈指のドラマーが、今回ご紹介するバーナード・”プリティ”・パーディー(Bernard “Pretty” Purdie)です。
ジャズドラマーとしてスタートした彼の音楽人生は、ハネ感を持ちながらも歌ものであるポップミュージックに合うエイトビート-16ビートのフィールを演奏する天賦の才を得ていました。
60年代中盤よりセッションミュージシャンとして尊敬とともに多くの音楽家たちと交流を持った彼。
共演者の中には、なんと稀代の詩人であり歌手として初めてノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランにまで及びます。
その他海外でも、日本の音源でも活躍が見受けられる稀有な人物です。
例えば、SMAP(『SMAP 007 〜Gold Singer』。同アルバムはオマー・ハキム、ヴィニー・カリウタなど名ドラマーが参加)の音源の録音に携わったりと、その活躍は多岐にわたります。
そしてもちろん、バーナード・パーディーの魅力はまだまだありますので、
- 彼のドラムの魅力
- セッティングの秘密
- 愛用したスティック
- 聞いて欲しい名盤
の順に紹介していきたいと思います。
特に、名盤に関しては「ファンクを語る上で外せない曲」もあるので、ぜひ最後までご覧くださいね!
目次
バーナード・パーディーのドラムは「グルーヴ」が魅力
「ドラムの役割」を音で説得させるドラマー
ドラマーとして大事な役割の一つに「聴衆に心地よいグルーヴを提供すること」が挙げられます。
使い古された用例ですが、フィルインを「オカズ」というように、通常楽曲で演奏されるビートは主食の役割を担います。
例えば、米の不味い定食屋にお客様が通うでしょうか?
厳選された米で炊いたご飯は、少しのおかずでも食が進むものです。
これはドラムでも同じ。
つまり、手数や小手先のテクニックではなく、
- 見て聴いて体で感じさせるドラム
- 身体が思わず踊らさせてしまうようなドラム
と言った心地いいリズムを作り出すことこそが、本来のドラムのあるべき姿。
この「心地いいリズム」を言葉でなく音で説得させたドラマーが、バーナード・パーディーなのです。
「心地いいビート」は、時代に左右されなかった
流行りのものは、どうしても一過性でブームが終わってしまうものです。
しかし、バーナード・パーディーの演奏は今もなおヒップホップのサンプリング・ソースとしても多く使用されています。
これは彼がドラムの在り方をしっかりと考えていたからこそではないでしょうか?
- 「自分はすごい!」と言わんばかりの手数ドラム
- バンドのグルーヴを無視した独りよがりなドラム
私たちは、ドラムを楽しみすぎるあまり、時に自己中心的なドラムを叩いてしまいがちです。
もちろんこれもドラムの楽しみ方としてOKです。
ですが、たまにはバーナード・・パーディーのように「心地よさ」を追求してみませんか?
やはり「心地よさの追求」こそがドラムの役割であり、土台だと思います。
「ハーフ・タイム・シャッフル」の生みの親
ドラマーの登竜門として知られるハーフ・タイム・シャッフル。
実はバーナード・パーディーが生みの親と言われています。
その後、このビートに感銘を受けたTOTOのジェフ・ポーカロが、名曲ロザーナに使用。
【TOTO】ジェフ・ポーカロ教則DVDで、ハーフタイムシャッフルを学ぶ!
そして、このビートは、今でなお数々のドラマーを苦しめつつ、驚嘆させる伝説のビートとなっていきました。
無駄のないドラムセッティングにグルーヴの妙味の秘密が?!
バーナード・パーディーの機材
彼の名演をご紹介する前に、具体的な機材面についてご紹介していきましょう。
- ドラムメーカー: SONOR
- スネア :14×6インチ(以下直径×深さ)
- バスドラム :20×18インチ
- タム:左から13×11インチ、12×10インチのツータム、16×15インチ
- シンバル :左からハイハットシンバル、ライドシンバル、クラッシュシンバル、チャイナシンバル
- スティック:長さ425mm×径14.2mm
こちらのセッティングを主に好んで使用しています。
①ハイハットとバスドラムのサイズ
日本のリハーサルスタジオに置いてあるドラムセットでは「ハイハット14インチ・バスドラム 22インチ」がほとんどです。
こちらは世界的にみても一般的なのですが、バーナード・パーディーの場合は「ハイハット13インチ・バスドラム 20インチ」と小口径となっています。
その理由は「倍音(サステイン)をコントロールしやすい」から。
また、レコーディングの際に録りやすいサイズ感でもあったそうですよ。
②タム類のセッティング
通常、バスドラムにマウントした2つのタムは、サイズ順に「12インチ・13インチ・16インチ」とセッティングします。
しかし、バーナード・パーディーは、タムを逆にして「13インチ・12インチ・16インチ」という順番に組んでいます。
彼のようなグルーヴを軸にするドラマーは、ハイハット(ライド)・スネア・バスドラムで曲の大部分を演奏します。
そのため、タムは装飾的なもの。
必要な折に芯のある13インチを打ち、それより高音の12インチを補助的に用いたと考えられます。
タムで12⇨13⇨16と、音程が落ちるフィルインを叩く時…
- 通常セッティング:「LRL」となり、両手が交差するタイミングがあり腕の運動として不便
- パーディーのセッティング:「RLR」とドラムセット上で腕が交差しないようになる
③シンバルのセッティング
こちらもユニークなセッティングと言えるでしょう。
まずライドシンバルは、左手側・座った時の頭の位置と同じくらいの高さに設置しています。
こちらは「ハイハットの近くにライドシンバルを設置することで同じく刻みシンバル間の移動をスムーズにさせる」という効果があります。
リズムキープにかかる集中力への負担を楽にするためにも考えられたという、印象を受けます。
ライドシンバルはボウ(表面)部分でビートを刻み、カップ部分でアクセントをつけたりするのはもちろん、エッジの部分をスティックのショルダーで叩くことでクラッシュのアクセントを用いたりと、多彩な音色で表情をつけやすい楽器です。
そちらをコントロールしやすくなるメリットも大きいでしょう。
上記3点を動画で確認してみよう!
また、椅子を高めにして腕を大きく動かすことなく最小限の動きにしているのも特徴です。
一打一打を(リラックスしながらも)丁寧に叩いている姿が印象的でもありますね。
巨体でありながらも背筋を立てて、リラックスしながらも楽に、コンパクトに演奏できるセッティングだと言えるでしょう。
バーナード・パーディーが愛用したスティック
過去のデータを元に、まとめてみました。
- 材質:ヒッコリー
- サイズ:長さ425mm×太さ14.2mm
- チップ:ティアドロップ(楕円)型
通常のスティックと比べると、やや長いスティックを使用しています。
長いぶん、小さなストロークでも音量を出しやすいという利点があるのが特徴。
チップ形状も楕円形なため、前述した楽曲に彩りを与えるシンバルワークに一役買ったところがあるのでしょう。
現在手に入るスティックで似ているものは?
『名盤』揃いのバーナード・パーディーおすすめアルバム
ファンクを語るなら外せない!名盤3選
個人的な見解ですが、彼の演奏が存分に活きるのは歌もののバックです。
そこでまず必聴と言えるのはニーナ・シモン『Sings the Blues』(1961)が挙げられるでしょう。
次に、キング・カーティス&ザ・キングピンズの一員として“ソウルの女王”アレサ・フランクリンのドラマーを務めた際の名盤。
共に1971年に録音されたものですが、ソウル・ファンクを聴くものとしては外せない名盤です。
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バーナード・パーディーは「技術的に常に正確であろうとすると、自由を奪われてしまうことになる。僕は正確さより、自由の方を選ぶ」と発言しています。
この意識が根底にあることにこそ、楽曲にどこかリラックスした印象を与えるようなビートを生み出すのが可能なのだと思います。
すでに廃盤となってしまいましたが、彼の教則ビデオはリラックスした考え、ユーモアあふれるビートへの愛情が詰まった映像作品となっています。
一部はインターネットでも視聴できますのでよろしかったらご覧ください。